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転職サイトPROSEEK > 転職コラム > 仕事のモチベーション >vol.02 松田公太氏 (フードエックス・グローブ株式会社)
プロフィール

まつだ こうた
1968年宮城県生まれ、東京育ち。
73年から父親の転勤のためアフリカ・セネガルで過ごす。78年米国マサチューセッツ州レキシントンへ移住。86年筑波大学国際関係学類入学、アメフト部で活躍。90年三和銀行(現UFJ銀行)入行。優秀外交賞を2期連続受賞。96年スペシャルティコーヒーに出会い起業を決意。同年退行、貿易会社社長に就任。97年8月タリーズ日本第1号店を銀座にオープン。98年タリーズコーヒー・ジャパン設立、代表取締役社長就任。2001年7月同社は飲食業界最速(当時)でナスダック・ジャパン(現ヘラクレス)へ株式上場。02年フードエックス・グローブに社名変更、持ち株会社に組織改編。著書に『すべては一杯のコーヒーから』(新潮社)がある。
フードエックス・グローブ株式会社
持ち株会社として飲食店の経営・FC展開を行う事業会社を統括。「タリーズコーヒー」を主力に、上質な緑茶をカジュアルなスタイルで提供する「クーツグリーンティー」など海外進出も視野に入れた新業態の開発に挑む。
「一杯のコーヒー」
松田社長の半生を綴った一冊
タリーズ創業者トム・オキーフ氏を直撃、日本での契約を勝ち取ったエピソードは感動的
座右の銘は“No Fun,No Gain”(楽しさなくして得るものなし)単調な仕事でも創意工夫すれば、楽しく自分を成長させる仕事になるという意味
「ハドル・ミーティング」参加者が立ったまま腹を割って議論 アメフトの「ハドル」に由来

――新卒で入社した銀行では、新規開拓を希望していたそうですね。
松田:最初に配属されたのは、稟議書を事務的にチェックする部署でした。ところがその実態は“雑用係”。ATMコーナーの現金の出し入れや清掃など単純作業ばかりでした。私がATMの修理をしたこともありますよ(笑)。研修で同期が集ると、いかに自分の業務に雑用が多いか痛感させられました。自分の成長を常に意識していただけに、悔しさと焦りを感じましたね。ただ、日常業務にも学ぶべきことはあると自分に言い聞かせ、ATMコーナーに現金を入れる作業も自分で時間を計り、5分でも早く仕事が終わるよう創意工夫しました。すると段々仕事が面白くなり、次第にレベルアップしたと感じるようになりました。
――次は都心の赤坂支店に異動しましたね。
松田:支店長に直訴して、念願の新規開拓を担当することになりました。しかし、担当になって1年ぐらいは、なかなか成績を上げられませんでした。経験も浅いのにいきなり現場に出たので、提案の的が外れていたのです。そこでふと振り返ると、相手のニーズが分かっていないと気づきました。まずは営業先の会社をもっと勉強すべきと考え、飛び込み先でパンフレットをいただいたり、社長が語る経営理念や思いに耳を傾けるようにしました。銀行の仕事は、財務情報が基本ですが、違う側面からアプローチしたのです。
――逆転の発想でしょうか?
松田:私個人が社長を好きになって、尊敬できるか、学べるかを中心に考えるようにしました。そうすれば情熱を込めて、会社や業界を調べるようになる。これは男女関係と一緒ではないでしょうか。相手の女性を好きになったら、相手をもっと知りたくなりますよね(笑)。社長を好きになれば、会社のニーズや資金の状況も、段々分かるようになってくるんです。それからは成績も徐々に上げられるようになり、優秀外交賞の受賞という結果を出すことができました。
――「給料の5倍稼ぐ」ことを目標にしたそうですね。
松田:今までデスクワークでしたし、数年で独立しようと思ってましたら、会社に恩返しするためにも、自分に高い目標を設定しました。明確な数値目標を定めたことで、目標達成に強くこだわるようになりました。銀行員は厳しいノルマもなく年収も高い。それだけに達成・未達成が一目瞭然である数値目標は、自分を奮い立たせるのに役立ちましたね。
――銀行を辞めてからは、何をなさっていましたか?
松田:貿易会社の社長となり、輸入業を行っていました。三和銀行の看板なしで、自分に本当の営業力があるか試したかったのです。米国からパソコンの周辺機器を輸入して、無謀にも一般家庭への訪問販売にチャレンジしました。始めはインターホンを鳴らしても誰も出てこないし、たまに出てきてもチェーン越しにドアをバンッと閉められてしまう。それでも100軒訪問するれば1人ぐらいは興味を持って買ってくれるものです。瞬時に相手の心をつかんだり、短い時間で私を好きになってもらうという“真の営業力”が磨かれました。個人的にはこういう泥臭い仕事も好きだったりします。苦しい思いをするほど自分が成長できると信じていますから。貿易会社時代は、コオロギ入りのチョコレートなども輸入しました(笑)
――念願のタリーズ日本第1号店をオープンさせましたね。
松田:最初の数ヶ月は赤字続きでした。銀座の大通り沿いに店舗を確保して、十分事前調査を行い、月商500万円はいけると確信していました。ところが銀座のお客様はそう甘くはありませんでした。銀座だからこそ有名なお店に行きたがるのです。近所のスターバックスは大行列なのに、ウチにはお客様が全然来ない。ついにあと2カ月で“倒産”という危機に追い詰められました。
――ギリギリの状況ですね。
松田:仕入れ先にも支払いができませんでした。でも、そういう状況にもかかわらず、守りから攻めの姿勢に転換したのです。コーヒー屋の飛び込み営業なんて聞いたことがないと思いますが、手書きのチラシ片手に周辺の会社を営業して回ったんです。すると三越の方などが、徐々にお店にいらっしゃるようになりました。それがお店に活気を呼んで、通りを歩く人も釣られて入る好循環を生み、ついに黒字転換しました。開店資金で7000万円の借金を背負い、生きるか死ぬかという状況に追い込まれましたが、崖っぷちに立った人間こそ力を発揮するんです。
――フェロー(※)の活躍も大きかったようですね。 (※タリーズでは社長からアルバイトまで区別なく「フェロー」(仲間)と呼び合う)
松田:私が死ぬ気でやっている気持ちが伝わったから、彼らも真剣に手伝ってくれたと思います。彼らとは単にお店の運営やコーヒー豆の話だけではなく、本当にお互いの人生にも踏み込んだ話をしたんです。そして、2度とない貴重な時間をお店で過ごしているのだから、時給のためではなく、自分のプラスになる仕事をしようと訴えたんです。するとみんな仕事にのめり込んでいって、ついに社員となり幹部になった人もいます。以来当社は「最高の仕事が経験できて、一人一人の可能性が広がる職場を作る」を経営理念の1つとしています
――人事に対する考え方を教えてください。
松田:大切なのは、「目的」や「目標」を持って楽しく仕事をしていただくことです。人事制度では「目標」の進捗を管理できる仕組みを積極的に取り入れています。単に業務目標だけではなく“人生の目的”から書くようにしています。「目的」とは自身が最終的に到達したい言わば“夢”のようなものです。さらに、「目的」に向かうプロセスとなる「目標」は数値化して、明確に達成をフォローできるようにしています。目標の進捗状況は毎週部門長がチェックして、2週に1回は私も入れたレビューミーティングを実施しています。
――フードビジネスの面白さとは?
松田:「ヒト・ビジネス」だということです。この業界はコミュニケーションとホスピタリティーが重要な鍵を握っていて、単にコーヒーを売るのではなく、心と心、人と人とのつながりを大切にすると、ドンドン仕事が楽しくなります。心と心をつなげようと思えば、お客様への関心も高まるし、お客様もそれを感じ取ってリピーターになってくれる。タリーズが他社に比べリピーター率が高く、既存店売り上げを毎年伸ばしてきているところに、それは現れているのではないでしょうか。
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